こっちゃん(注:9歳)にはお気に入りの居酒屋が2軒ある。

というか、居酒屋の方は、かつて母親(私)のいきつけだった居酒屋(和食処なかじま)だ。
とにかく刺身や料理が美味い。日本酒がすすむ。こっちゃんが生まれる前は、会社の上司や、同僚を連れて、よく飲みにいっていた。


そういえば、わたしたちの婚姻届って・・・
私たちの婚姻届は、この店(なかじま)で保証人にハンコを押してもらった。ちなみに、誰がハンコを押すかはジャンケンで決めた。
sano-degawa保証人をじゃんけんで決めるんですか?!
って思うかもしれないが、この中の誰が保証してくれてもいい、そんな飲み仲間であり、仕事仲間であった。当然、ジャンケンで保証人を決めるからには、全員に「ハンコもってくるように」と伝えていたのだが・・・
保証人がハンコを忘れた
よりによって、じゃんけんで勝った2人のうちの1人がハンコを忘れていた。彼以外は全員持参していたというのに。なんてこった。幸先が悪いではないか。
とはいえ、忘れたものは仕方がない。後日押してもらうことを約束して宴会はつづく。
ところが、そろそろ宴会もお開きというころ、大将に呼ばれ、「ホイッ」と手渡されたのは、なんと「山本」のハンコであった。ハンコを忘れた保証人=山本氏のハンコである。
私たちがのんだくれている間に、大将がこっそり買いにいってくれていたのだ。ホスピタリティ高すぎて、その場にいた全員が驚いて言葉を失う。とにかく、そんなこんなで、無事、わたしたちはこの晩のうちに、婚姻届を書き上げることができたのである。
トラブルは捨てたもんじゃない
ところで「保証人がハンコを忘れた」という、ちょっとした事件があったおかげで、10年以上前のこの記憶が、今、鮮明に蘇っている。何事もなく無事ハンコを押せていたら、じゃんけんで保証人を決めるという、アホなイベントのことすら忘れていたかもしれない。
人生にさまざまなトラブルはつきものだ。でも大切な思い出が何にも侵食されることなく、鮮明に残っていることを思うと、案外、捨てたもんじゃないなと思う。
さて、さすがにこっちゃんが生まれてからは、なかじま通いもしばらくご無沙汰だった。数年前、こっちゃんを連れて行ったら大歓迎してもらい、それからなかじま通いが復活した。というのも、こっちゃんが大将の料理を気に入ってしまったからである。そりゃそうだ。大将の出すものは本当に旨いからだ。以来、なにかにつけて「大将のおにぎり食いてえ」と言う。
運動会のあとは、なかじまで打ち上げすることがすでに決まっている。高校生になったら大将のところでバイトする、と言っているが、まあまあ仕事に対しては、厳しいと思うぞ。がんばれ!


大将の店、「和食処なかじま」の最寄り駅は、小田急線の本厚木駅だ。沿線や近場の人はぜひ行ってみて欲しい。

きっと、カービューたつ子のように食して、笑顔になれるはずだ。
※注:ほぼ食べ残さず、カービィのようになんでも吸い込むパパ(夫)は、こっちゃんから
「カービィたつ子」と呼ばれている。
小料理屋のカウンターで待ち伏せする9歳?!
さて、こっちゃんお気に入りの居酒屋、2軒目は近所にできた小料理屋である。おかみさんの出身地である北海道の食材や、湘南野菜などをつかって提供している。
最初、その店構えから子連れは無理なのでは…と遠慮していた。たまたま、こっちゃんの友達のパパから「子連れ大丈夫ですよ」と聞いて、通いはじめた。おかみさんのおかげで、こっちゃんは苦手な野菜も、ほんのちょびっとだけ克服していたりする。
ちなみに、こっちゃんがこの店が気に入った理由。それは

おしゃべりが楽しいから
である。この店は基本的に5席ほどのカウンター席がメインだ。テーブル席もあるが、そこも大人が4人も座ればいっぱいになってしまう。そんなこじんまりとした店なのだが、こっちゃんは、カウンター越しに、女将のなおさんや、お客さんたちとおしゃべりする、9歳にして、のんべえのオッサンみたいな楽しみ方をしているのである。
当然、のんべえの母をもつ娘であるからして、将来、「飲まない」という選択肢はおそらくないだろうが、万が一、隔世遺伝で「下戸」なんてことがあったら、かわいそうである。アルコール耐性があることを願うばかりだ(こっちゃんの父方のおばあちゃん、ひいおじいちゃんは下戸だ)。
こっちゃんの絵がショップカードに採用されたぞ!の巻
ちなみに、この店には、こっちゃんの「お絵かき帳」が常備してある(なおさんからの北海道土産である)。そのノートは、こっちゃんをはじめ、お客さんは自由に描いていいことになっており、たまに酔っ払った絵心あるおじさまが、変なキャラを描いて「色を塗ってくれ!」とかリクエストを残していて面白い。すでに、旅館の芳名帳のようなノートになっている。

そんなこんなで、こっちゃんはいくたびに、女将のなおさんや、食べ物の絵を描いているのだが、
なおさんは、そんなこっちゃんの絵を、お店のショップカードに採用してくれて、ことあるごとにお客さんに紹介してくれるのである。ありがたい限りである。
お店の名前は「けらあんな」。
「けらあん」はアイヌ語で「美味しい」という意味なんだそうだ。
というわけで、冒頭の絵は、勝手にこっちゃんが脳内で、なかじまの大将となおさんをバトらせた絵である。毎回、店に絵を残して立ち去り、山下清みたいなこっちゃん。そんな絵が毎回成長しているのを感じられるのも、とてもしあわせな時間だ。
TOMOKO
