【MAGIC OF ART #1】失敗を面白がる脳を育てよう ─ マッキーアートがひらく創造性の扉

AIがこれほど世の中に急速に浸透したのはなぜだろう。それは私たち人間が「間違いや失敗を恐れる生きもの」だからかもしれない。もちろんAIだって

sano-degawa

回答は必ずしも正しいとは限りません

そう忠告している。それでも、AIは即座に「最適解」を出してくれるし、指摘すれば即座に修正案を返してくれる。早く、正しく、間違えずに。そんな人間の欲求を完璧に満たす、魅力的な存在になってしまった。

でも、AIに頼りすぎれば、人は「正解を出すための思考回路」に閉じ込められてしまう。なぜなら、AIは「確率」の外にあるものをノイズとして切り捨てるからだ。イレギュラーなものに可能性を見いだしたり、失敗を面白がったりできるのは、今のところ、人間だけのはずだ。

目次

AIが最適解を出す時代に人間だけができること

失敗や困難に直面したときほど

トラブルきたきたぁっ!アドレナリンでまくりだぜ!

というジャイアン気質の人もいる。でも、少なくとも私はそのタイプではない。どうでもいいけど、この部分だけで「ジャイアン」ってわかるのってすごくないか?

「ジャイアン気質」を持たない私でも「失敗を面白がる力」を育てることはできる。

その発見のきっかけとなったのが、マッキーアート=ラクガキだったのである。

「失敗を面白がる脳」は、育てられるのか?

わざわざ絵にするまでもないが、これがゼブラのマッキーペン(油性)だ。

特に、お気に入りなのは極太マッキーの極太側だ。

マッキーに出会ったのは、まったくの偶然であった。夏休みにこっちゃんと一緒に参加したお絵描きのワークショップで、マッキーを握ったのが「はじまり」である。

そこで、直感的に

tomokobito

これはいい!

と思った。

これはいい!と、「直感的に」思ったが、それが「何にいいのか?」までは、よくわからないまま、しばしラクガキを続けることになる。それこそAIには直感できない「感じる選択」「感じる思考」である。おまけに世の中は「目的思考」が当たり前であるからして、メリットやベネフィットもなしに飛びついたり、時間と労力を投じて続ける変態性を持っている私のような人間はちょっとレアかもしれない。

神は私に、ジャイアン気質を与えなかったが、その代わり、自分の直感と好奇心を信じて突っ走れる変態性を授けてくれた。ありがたい。

失敗を面白がる力と創造性の甘〜い関係♡

さて、失敗やトラブルに直面するほどアドレナリンが出るようなジャイアン気質を持たない私が、どうしてラクガキを全裸で公開できるのか。
答えは単純で、失敗が面白くなってくるからだ。

マッキーで一発描きすると、当然、やり直しがきかない。

sano-degawa

やっちまった!

と思うことはしょっちゅうである。

でも、失敗した!と思った瞬間から面白くなるのが、ラクガキの懐の深さだ。実際やってみると、

omatsu

人生のほうがよっぽどやり直しがきくわね!

そう思う人もいるはずだ。とはいえ、いきなり

なんでもいいからマッキーで描いてみようぜ

なんて誘われても、いやいやちょっと・・・とか、何から描けばいいの?と思う人も少なくないだろう。創造のきっかけは「道具」でも、「お題」でもなんでもいいのだが、人間というのは、なにかしら「ひっかかる」ものがないと、創造することはできない。

チコちゃんに「ぼ〜っとしてんじゃねえよ!」って言われて試合終了である。

そこで「チコちゃん」が登場したのも何かの縁、ということで、チコちゃんを試しに描いてみようではないか。私もチコちゃんを描いたことはなかったのだが、この記事のために描いてみた。4回チャレンジしても15分程度だったので、ぜひ試してみて欲しい。

マッキー1本でチコちゃんを描いて「創造性の正体」を掴む

一発目。記憶で描いたチコ(左側)。誰だこいつは?

下書きなしの一発描き。1回目(左)、2回目(右)


ここでわかるのは私の記憶がいかにポンコツかということだろう。尺が違うし、謎の目のクマ?もなんだか怖い。マッキーの無駄遣いになるので、髪を塗りつぶすのも途中でやめた。

あんまりひどいので2回目は画像検索して見ながら描くことにした。ちょっとはマシになったか?

実際のチコちゃんはカラーだが、私たちはマッキー(黒のみ)で描くべし、という、私が勝手に決めた謎ルールがある。大した絵心もない人間が黒一色で煌々と燃える炎や湯気を表現するのはムズイと。

ならばと、鉛筆で「下書き」してから描いたのが、こちらの赤い背景のチコちゃんである。

炎を入れるのがムズイと左脳が働きまくり、目玉だけを描き入れたヘッポコぶりだが、今日の記事で一番「ホンモノに近い」のは、この「下書きありのチコ」だろう。

でも、だから何?って思わないだろうか。

面白いか?と言われると、1ミリも面白くない。なんの創意工夫もない。なるべく忠実にチコを「真似ただけ」である。チコちゃんの番組を見る方がよっぽど面白い。帰してくれ。

そこで、4回目の挑戦である。私の関心事は「どうしたらマッキー一本でチコのお怒りぶりを表現できるか」である。じつは、あなたならではの「創造性」を引き出すためには、ここも重要なポイントなので少しだけ補足しておく。

創造性が発露する瞬間とは

あなたはチコの何を表現したいと思ったか?

チコの皮肉っぽさ、憎ったらしさなのか、それともラブリーさ♡なのか。ひとりひとり違うはずである。誰が、何と言おうと関係ない。

あなたが描きたいと思う、チコの特徴(魅力)にスポットライトを当てよ。

ここを念頭に置いてはじめて、あなたの「創造力&想像力」が発動する。3回の失敗も活きてくる。今回の私は「チコのお怒りぶり」を表現したい。ならばどうするか?

4回目:マッキー一発描きに戻した

まず、髪の毛を丸ごと飛ばしてみた。
この時点で、もはやチコではない。別人じゃねえか!そう思われても気にしない。

誰もそんな勝負を仕掛けてくれと頼んでいないのだが、こちとらマッキー1本で勝負している。目の炎は水彩や色鉛筆のような透明感のある色を重ねることはできない。そこで、目の中に直接炎を入れた。もうちょっと大袈裟にすればよかった。

一発勝負だから仕方がない。悔しいからワンピースにパンダ?のワッペンをつけてやったぜ。

果たして、これは「チコちゃん」なのか?

言ってもらえなければ、わからないし、言ってもらってもチコ?とは認めてもらえないレベルかもしれないが、描いたことがないのだから、ここは下手くそでアタリマエと割り切ろう。

そんなことより、あなたはチコを描いているときに、「そうじゃない!」とか、「もっとこうしたいのに!」という「欲」は生まれきただろうか。そっちの方がよっぽど重要である。濁りのない自分の欲求があらわになること。それが、次の創造とアイデアの引き金を引いてくれる

たとえば今回なら「チコのお怒りぶりを表現したい」という「欲」や「衝動」を発見したから、髪の毛を飛ばすとか、ワッペンをつけるとか、こうしてみるか、ああしてみようという欲=アイデアが生まれてきた。制約や欲は、案外、創造性を引き出す引き金になってくれるのだ。

イメージが絵になるのではなくて、絵(描いたもの)がイメージをつくってくれる
by 寄藤文平

失敗を面白がる「創造性」をひきだす3ステップ

マッキーアートの流れを3ステップにまとめるとこんな感じだ。

STEP
ルールを味方につける

マッキー1本・黒一色。
「制約」は敵じゃない。発想を刺激するフレームと捉える

STEP
観察する

思い通りにいかない線の中に、創造の種が隠れている

STEP
「欲」「衝動」を発見し、遊ぶ

「もっとこうしたい」「なんか違う」その違和感が、次のアイデアを連れてくる。
創造の引き金になる

欲と制約と失敗が、あなたの感性思考と創造性を引き出す


実際に、マッキー1本で描いてみると

tomokobito

あれ?ここどうすればいいの?

と立ち止まることがよくある。絵を描く経験やひきだしが少ない私は特にそうだ。で、与えられた制約の中でどうするか?その空白を埋めるのが、その人ならではの感性や創造性である。もちろんネットを探せば、正解らしきものやヒントはいくらでも見つかるだろう。ただ、見つけてきたそれが本当に「あなたらしい正解」になるかどうかはわからない。

リサーチや研究は悪ではない。でも、見つけたものを組み合わせたり、アレンジしたり、最後は自分で正解を決める、それが自分の創造性、感性思考を育てることにつながる。

時間があれば
予算(金)があれば
人がいれば
思う存分できるのに!

ブーブー言いたくなる気持ちもとってもよくわかる(私もそうだった)。だが、人間は、案外「制約」があるほど、創造的になるという不思議な生き物である。そして、自分の「欲」に正直になるほど、想像力も創造性も増すのである。

「欲」というのは決して悪いものではない。煩悩とともに生きるくらいのほうが、人間らしくてよろしい。密教の世界では禁欲なんてしないという噂もあるが、それは本当だろうか。

とにもかくにも、自分の「欲」をごまかして「いい人」演じていると、なんだかつまらない人生だったな、で終わってしまう。欲も制約もなかったら、人は窓辺でひたすらぼーっとして一生を終わってしまうのだ。当然、チコちゃんが叱ってくれることもない。

たしかに、それはそれで「平穏な人生」でよいのかもしれないが、そんな退屈な人生は嫌だ、わたしはもっと創造的に生きたいのよ!と、思うなら、騙されたと思って「チコマッキー一発描き」に挑戦してみよう。

時間をかける必要はない。1枚5分で終わらせよう。納得がいかなかったら納得いくまで描けばよろしい。3枚描いても15分で終わる。失敗が作品になる世界をぜひ体験してみてほしい。

そして、自分の描いたチコをまざまざと見ることが大切だ。「こんな絵を描いている場合じゃない」と苛立つ人もいるかもしれない。それはそれでオッケーである。湧き起こる自分の本当の「欲」と「衝動」に気づくこと。それが、いつだってあなたを新しい自分へと誘ってくれるのだから。

さて、驚くなかれ、本記事はなんと「連載」である。マッキーで描いていたら、言葉が溢れ出してくるようになってしまった。というわけで、続きを読みたいと思った「怖いもの知らず」なあなたはこちらへどうぞ。

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TOMOKO

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この記事を書いてる人

TOMOKO|感性思考プロデューサー/アーティスト/ライター
AI時代を「感じる知性」で生きる。
感性と思考のあいだに生まれるもうひとつの知性──感性思考(Sensing Mind)をテーマに、ことばやラクガキを通じて世界を編み直す方法をお伝えしています。

TOMOKO’S WONDERLAND は、感性を再起動するメディアです。

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