GORIFULL 061 | 生涯現役。

こんなカッコいいゴリラがいたのか!
と思わず描いてしまったのは、仙台市の八木山動物公園のドン君。当時の日本国内最高齢とされる50歳まで現役で活躍しておりました。

ゴリラの50歳は、人間なら90歳相当とも言われているそうです。

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「生涯現役」が長生きの秘訣

絵を描きはじめてよかったと思うのは、一生続けられるライフワークが増えたこと、新しい出会いが広がっていることです。文章もそうですけど、自己表現に終わりはありません。「生涯現役」でいられます。もちろん、「生きる」ことだって、自己表現のひとつですが、絵を描く、文章を書く、そんな面倒くさいことを「わざわざ」やることで、人生にスルメを噛み締めるような味わいが増してきます。とはいえ、スルメも噛み続けると味がなくなってきちゃいますから、ゴリラを描いたり、ゴリラじゃないものを描いたり、文章を書いたり、新しいスルメを投入して味わい直す、みたいなことをしているんですよね。

まどみちおさん、柚木沙弥郎さん、大好きなアーティストはみんな生涯現役で、大変長生きされました。長生きできたのは、人間の根源的な衝動に従っていたからじゃないかって思います。もちろん、表現するのは、嬉しい、楽しいことばかりでなく、苦しいこともありますけど、「苦しい」という感覚、感情だって、生きてるからこそ、感じられるものですし、苦しいを突破した先に最高の気分を味わえたりします(※味わえないこともあります)。

最後に人間に託されるのはアートじゃないか

AIがどんどん進化して、仕事をどんどんAIに任せられるようになったら、人間に残されるのは、アートの領域だけなんじゃないかって時々思うのです。

もちろん、アートの世界にもAIは入り込んできていますが、何を「いい」「美しい」「面白い」と思うのかという美的感受性や、直感、センスの領域には、人間にしか感知できない領域があるはず。というより、「アート」というのは、創作された成果物だけじゃなくて、生きた感受性そのものの方だよね、って思うんですけどね。

大勢の人から支持されそうな、「最大公約数」のような答えを出すなら、AIの方が早くて正確かもしれない。AIは、確率分布の真ん中を取るのが得意です。ある意味、とても「客観性」に富んだ存在ともいえます。

その一方で、AIは「特異」なもの、「わからないこと」を導き出すのは苦手です。なぜなら、AIが抽出するのは既知のデータと、確率分布の内側に閉じているからです。まだ誰も「観測」したことのないものを拾うことはできないし、確率分布の外に「おいしいノイズ」があっても、そこに自発的に手を伸ばすことはしません。でも、人間の感覚はちがいます。まだ名も、形もない何か、誰にも支持されていない何かに「ひょっとして?」という予感を感じ、そこに息を吹きこむことができるのは、人間の感覚や感性だけです。

わかるものは、ほとんど価値をもたなくなってきている

AIがこれほどのスピードで私たちの生活や仕事に浸透したのは、人間が孤独を恐れ、間違いを恐れ、安心、安全を求める生き物だからでしょう。なるべく早く、正解に近づきたい。なるべく多くの人に、そうだね、いいねと言われたい。でも、「いいな」「面白いな」「綺麗だな」と思う、その「感覚」は、本来、自分で味わう以外に味わいようがなく、非常に個人的で孤独なものです。

表現の孤独は埋めるものじゃない

人が何かを表現しようと思うとき、まず最初にしなければならないのは「感覚の孤独」を味わい尽くすことです。だから、ちょっとしんどいこともあります。

人に共感されるか、支持されるかなんて、そんなこたぁわかりません。それでも、自分はどう感じ、どう見えているのか。その個人的な感覚を、絵画やら、文章やら、立体の創作物に落とし込んでいくのですから、そりゃあ、孤独に決まってます。そんなめんどうくさいこと、「やりたくない」と思うのは、そりゃ当然です。

では、自分の創作物の出来栄えをAIに尋ねたらどうでしょうか。「すばらしいです」「さすがです」「いい線いってます」とか調子よく返してくれるかもしれません。だけど、AIだって、本当はわかりゃしないのです。なぜなら、人間は関係性の生き物だから。相手との関係で「感じ方」は、いかようにも変わってしまう。AIにどれだけ親切な回答をもらっても、孤独が埋まらないのはそういうことじゃないかと思うんですよね。

わざわざ孤独を味わう変な生きもののしあわせ

絵を描く、文章を書く、なんにせよ、表現することは、めちゃくちゃめんどうくさいし、孤独だし、決して効率のよい行動とは思えません。なんでそんなことを「わざわざ」するのか。ゴリラだって不思議に思うはずです。

非効率で面倒で、孤独。そうとわかっていても、やめられないのは、なぜなのか。人間であることの喜びがそこにあるからじゃないでしょうか。いや、そうでなきゃ、やってらんねーぜ!ともいえますが。孤独なはずの感覚が、目にみえる創作物になるのが嬉しい。その創作物を通じて、もうひとりの誰かの孤独な感覚を震わせることがあったら、もっと嬉しい。孤独でなくなるその「一瞬」のために、表現しつづけているのかもしれません。

ほかの生きものからしたら、異質としか思えないようなその行為を、最初から「やらない」選択を取る人も大勢います。でも、どういうわけか、一部の人間は、表現することをやめることができません。私もそうです。なぜなら、その孤独と対峙し、表現している間だけは、生きることに「現役」でいられるからじゃないでしょうか。

TOMOKO

参考文献:
『ゴリラ図鑑』写真・文:山極寿一, 画:田中豊美
スマホを捨てたい子どもたち: 野生に学ぶ「未知の時代」の生き方
山極寿一著

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この記事を書いてる人

TOMOKO|DRAW FIRST. THINK LATER.考えるな。まず描こう。
7分ドローイングで、思考に染まらない言葉を引き出します。
☆ゴリラを描く7分ドローイング「ゴリフル|GORIFULL」毎日更新中。

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